30年ほどで建てては壊すスクラップアンドビルドが、いまだ主流の日本の住宅事情。このO邸は、それとは一線を画したロングライフデザインの住まいだ。災害に強く、結露などによる構造木材の劣化の恐れを排除した躯体の耐久性と、高い断熱性能を備えた快適性、その2つの基本性能に空間のフレキシブル性を併せ持っている。外周壁と床面で強度を持たせた強い箱のような構造によって、スケルトン(構造躯体)とインフィル(内装・設備)が分離されているから、ライフスタイルの変化に合わせた間取りの変更も容易に。退職金を建て替えに費やすこともなく、ゆとりある時間を楽しめる。シンプルな素材と形に徹したインテリアによって、次世代が住み継いでいくことも可能だ。子世代が住宅ローンを抱えることなく暮らせたら、どれだけ日々は豊かになるだろう。解体費用も上昇傾向の時代、建築にかけた費用が短期間で掛け捨てにならないことこそ、本当の意味でのローコストであり、時代を見据えた賢くミニマルな選択といえる。
家がロングライフデザインであるためには、災害に強い強固な構造だけでなく、住む人の心に作用する豊かな空間性が欠かせない。ヨシの家では、いつの時代でも入手しやすく、加工もメンテナンスも容易な地元の杉材を室内外に積極的に活用している。使うほどに暮らしに馴染む自然素材を提案するのは、情緒がもたらす豊かさを享受し、愛着を感じて生きるための選択だ。外装にも杉材を使用し、細やかな木製格子とガルバリウム鋼板を組み合わせている。無塗装の杉材は数年を経てシルバー色となり、金属部分と一体化していく変化を楽しむことができる。床材は赤身と白身の縞がモダンな印象のヨシの家オリジナルの柾目の杉板。杉は空気を多く含んで肌触りが柔らかく、温かい。資源が豊富なためコストパフォーマンスにも優れており、傷がつきやすい欠点を凌ぐだけの採用理由がある。特別な豪華さよりも、安心に快適に、メンテナンス費用を最小限にして、住み継いでいける価値を持つことが、これからの家づくりの視点に欠かせない。
敷地面積 158.92㎡(約47.97坪)
延床面積 89.42㎡(約27.00坪)
1階面積 44.71㎡(約13.50坪)
2階面積 44.71㎡(約13.50坪)