「新住協」という組織名を耳にしたことがあるだろうか。正式名称は「新木造住宅技術研究協議会」。住まいの快適な熱環境のための高断熱・高気密・高耐久の構造研究を目的とし、自然エネルギーの活用、化学物質を極力抑制した健康を守る住まいづくりなどを基本理念として、住宅技術を研究している技術開発団体だ。この住まいの施主であるSさんは、住まいづくりを学ぶ過程で新住協の存在を知り、会員として研鑽を重ねていたヨシの家と出会った。新居への一番の期待は低燃費で暖かいこと、それと明るさに満ちた空間であること。県外から転入する夫妻のために、冬の雪対策も慎重に検討。要望に基づき悪天候でも車の乗り降りに支障のないインナーガレージの住まいとなった。ガレージは道路から距離を置かずに入り口を設け、除雪の範囲を最小限にしている。また、玄関までのアプローチにも雪が積もらないよう屋根付きとし、あたたかみを感じる秋田杉を壁天井にあしらい、一方はルーバーとすることで採光にも配慮されている。
キッチンハウス社のオーダーキッチンが主役の料理を楽しむLDKは、天井に高さを揃えた大きな窓が南側の壁一面に取られている。広々とした空間に広がるやわらかな陽の光。S邸の特徴のひとつは、窓や建具のレールや枠を埋め込み、極力段差ができないように線を揃えて、光の広がりを阻むものを最小限にした空間設計だ。そのうえで南側には開口部を大きく取り、道路に面した北側では極力閉じることによって室内に明暗の差が生まれ、遮るもののない広々とした天井の南側から北側へ向けた、きれいな光のグラデーションがつくられている。この対比による心地良さは光の明暗だけでなく、ふんだんに室内に使われた木材の組み合わせにも見て取れる。節のある無垢の松の床で、木が本来持つ自然のゆらぎを空間に投影し、他の造作部分では控え目なシナ合板を用いることで動と静の対比をつくり、その均衡した様子が人にやすらぎを感じさせる。光と木に包まれるような居心地の住空間で、夫妻の北国での暮らしが始まった。
敷地面積 242.07㎡(約73.22坪)
延床面積 143.26㎡(約43.33坪)
1階面積 91.09㎡(約27.55坪)
2階面積 52.17㎡(約15.78坪)