住宅設計者の省エネルギー自慢の我が家
有限会社 池田建築店

  池田建築店の代表、池田佐保さん。彼女が暮らす自宅は、2006年に同社で施工した省エネルギー住宅だ。海外の先進地域を参考に、「これからの住まい」をテーマとして、室蘭工業大学の鎌田研究室、西方設計の共同で設計され、第3回サスティナブル賞で最高賞の国土交通大臣賞を受賞している。無暖房住宅の性能に近づけながら、技術とコストの点で一般に普及可能な仕様を目指したその住まいは、13年経った今、秋田杉を主とする木部に飴色の輝きが加わり、完成時よりも美しい。庭の緑が窓一面に広がるリビングは、池田さんが一番安らぎを感じる場所。高校生を先頭とする三人の子ども達が、代々リレーしてきた机コーナーは、現在は末っ子と池田さんの指定席となった。宿題を見ながら炊事ができるよう、並んで設計されたキッチンには、あどけない文字で焼きそばの作り方が書かれた付箋が貼られている。幼稚園の頃に末っ子が書いたメモ。「中学生になった娘に、もういいかげん剥がしてと言われていますが、できません。もったなくて」と笑う。仕事を終え、自宅に戻って食事の支度、団らんを囲んで少しのお酒を楽しむ。子どもたちと賑やかに過ごす時間は、まだしばらく続きそうだ。秋田市の学生寮で暮らす長男は、引っ越して初めて実家の住宅性能がいかに優れていたかを実感したそうだ。それほどに別格な、穏やかでよどみない空気感に満ちている。



 自宅から徒歩1分で到着する池田さんの仕事場。様々な環境で温度変化のデータを取るため、建物半分の断熱をパッシブハウス級にし、入口に並ぶ窓は、3社のメーカーの同サイズが並べてある。これは住宅性能の落とし所を探るための試みだ。同様に試験的に取り組んだ自邸の仕様は、今では同社の断熱数値の基本となり、飽くなき探求は見事に成果を挙げている。断熱技術を掘り下げる反面、自社設計の建物では構造にプレカット材を使わず、手刻みの加工を貫く。木を見て、人の手で適所に割り振り墨付けをする。手間を惜しまない仕事のため、年間6棟ほどの新築工事が上限となる。それでも、いわゆる坪価格は一般的な数字だ。価値は高く価格は良心的、真の意味でのローコストと言える。目下の悩みは、次世代を担う若手大工の育成だ。「やっと仕事を覚えた頃に辞めてしまいます。叱られると堪えるようなので、褒めて伸ばすことを当面の目標に(笑)」。秋田の高性能住宅の先駆けである先代の父から受け継いだ同社を、さらに高めるべく邁進する姿は、若い職人の胸にも何かを灯すに違いない。研究と実践の日々はこれからも続き、その成果がまた次の時代のスタンダードを創出していく。


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