60歳定年は過去の出来事となり、未経験の人生の長さに直面する日本人。子育て期の二倍近くある、持て余すほどに長くなったセカンドライフを、夫婦で明るく過ごすために、ふたり暮らしの舞台となる家には、どんな条件が求められるだろう。第一に、小さな家であること。大きな家は、掃除や修繕などに伴う労力も出費も大きい。個室は最小限にして、客間としても使えるフレキシブルな空間がひとつあれば事足りる。第二に、お互いの声や気配が届きながら、ひとりに集中できる居場所のあるプランニングであること。そして第三に、窓に楽しみがあること。周囲の風景や庭の木々は、献身的に小さな楽しみを毎日届けてくれる。ふたりの共感の種となり四季を感じさせる窓計画は、家にいる時間が長いほど重要だ。もちろん寒さはシャットアウトし、美しさのみを届ける窓であってほしい。そんな要望を満たした住まいがこの平屋。お互いに不可欠な存在である夫婦がパートナーシップを保ち、慈しみ合いながら毎日を過ごすための工夫が仕掛けられている。
夫婦ふたりの自由な時間をどうやって過ごすか。最初のうちは、これまで叶わなかった長期の旅行や、新たな習い事に挑戦するかもしれない。でも非日常は続くと日常になり、やがて飽きがくる。それなら綿々と続いていく日常の質を上げてみるという選択肢はどうだろう。夫婦揃って食事の支度に勤しみ、友人を招いてホームパーティを催したり、それぞれの趣味に没頭したり。そうした愉しみの背景に、美しい景色や庭木を映す窓と、木材が織りなす住空間があれば、その日常は非日常を超えた価値を持つ。この夫婦ふたりのための平屋は、こんな暮らしを深層で望んでいたことに気づかせてくれる住まい。大人の家づくりは、自分たちもまだ気づいていない潜在的な要望を汲み取り、体現するスキルを持った設計者との出会いから始まる。あなたのまだ知らない願いを叶える住まいは、そこで過ごす時間を、静かな旅のように仕立ててくれる。
敷地面積 870.64㎡
延床面積 99.37㎡
1階面積 99.37㎡