その家で歳を重ねた自分を想像したことがあるだろうか。このN邸は、熟練の社員大工による丁寧な木工事と、一級建築士たちの感性で現代的なニーズを満たした和の住まいに定評のある加藤哲建築事務所が、若い夫妻の新居として提案した住まいだ。施主は共働きで子育てに取り組むNさん夫妻。「家に関するアドバイスだけでなく、生活面での助言や、空き地の所有者を探して交渉してくれたり、親身になってくれました」と奥さん。住まい手と作り手が二人三脚で見つけたのは南側に開けた住宅地。庭や菜園づくりを共通の趣味にと願う夫妻のため、十分なスペースを残して建つN邸は、東面と南面に軒のある縁側が回されている。深めの軒は少しの雨なら窓を空けたまま通風を確保でき、夏の日差しを遮るのにも有効だ。リビングの延長となる縁側は、庭作業の休憩や、子どもの外遊びを見守るスペースとなる。懐かしさと新しさがバランスよく取り入れられ、今だけでなく数十年後の自分たちにも馴染むであろう、懐の深さを持つ空間だ。
設計を担当したのは同じ子育て世代である同社の一級建築士・照井さん。Nさん夫妻の希望を叶えながら、予算内に納める工夫にも知恵と力を尽くした。「できるだけ多い個室の確保や、畑や庭のための敷地、吹き抜けもマストと、無理難題を自分たちでも自覚しながら話した要望に、期待以上のプランニングと予算で応えてくれました」とご主人。断熱施工にも力を入れる同社の勧めで、付加断熱が施され、ランニングコストを抑えた快適な温熱環境も備わっている。実際に住んでみて、雪見障子を引き込む戸袋の納まりや、建具の取手の加工など、職人の細かな心配りを感じ、費用対効果が高いと実感していると話す夫妻。「木材の扱いに長けた自社の強みを活かし、かつ性能にも手を抜かず取り組みました。引き渡しで施主さんが喜んでくれるのが、やっぱりうれしいですね」と清々しい笑顔の照井さん。住心地のために知恵を絞り、職人の細やかな手仕事が尽くされたプロのものづくりの世界が、ここでは確かに受け継がれている。
敷地面積 265.10㎡(約80.19坪)
延床面積 115.10㎡(約34.81坪)
1階面積 62.93㎡(約19.03坪)
2階面積 52.17㎡(約15.78坪)
(約15.78坪)