緑の残る高台の住宅地にある平屋の住まい。水平と垂直のラインが印象的な端正なこの佇まいは、豪雪地域の土地柄から選択された雪下ろしのしやすいフラットな屋根、建物の矩形から風除室やデッキ部分をスマートに切り取った半外スペースなど、質実な機能の選択から生まれた形状だ。建物の低い重心と落ち着いた色調が背景の林となじみ、ともすれば景色と乖離するモダンな形状を調和させている。夫婦と子どもひとりの家族構成であるS邸のプランニングは、S夫妻の要望で打ち合わせの当初から平屋の構想で進められた。玄関を入るとその脇に個室がひと部屋、そして、ダイニングを囲むようにキッチン、リビング、主寝室、和室、水回り、もうひとつの個室がそれぞれ配されたプランニングだ。南側にはリビングと和室のそれぞれに大きな掃き出し窓が設けられ、リビングは半外スペースに続く。ダイニングは手元が隠れる高さのカウンタ−があるセミオープンキッチン。動線良くコンパクトにまとまったワンフロアの暮らしは、説明不要の暮らしやすさと同時に、家族の気配がフロアで分断されない安心感と一体感も生む。
S邸の建つ横手盆地は、厳しい冬の寒さや積雪だけでなく、夏にはニュースで取り上げられるほどの最高気温を記録する過酷な環境。一年を通して空調設備に頼らずに過ごせる期間は短い。その厳しさに立ち向かうための家づくりに早くから取り組んできた三浦建築設計が手がける住まいは、雪深い県南地域で冬の暖かさとランニングコストの低さに定評がある。FPの家のパネル工法を知り尽くし、キャリアを重ねた自社大工が手がける堅牢な構造体は、夏涼しく冬暖かい住宅性能が何十年経っても大きく変化しない。家づくりにあたっては、つい建築時のコストに目が向きがちだが、光熱費はその家に住む間ずっと続いていく。今の出費と、将来に渡っての出費。もしそれが同程度の試算となるなら、住み心地が四季を通じて快適な高性能住宅に軍配が上がる。FPパネル工法の家の住み心地には、暖かさや涼しさに加え、せわしい現代において、必要とされる”静けさ”という、代えがたい価値もついてくるのだ。
敷地面積 270.98㎡(81.80坪)
延床面積 101.25㎡(30.56坪)