伊藤建友が手がける「クロスライン」が、その家で暮らす人のために大切だと考えることは3つ。1.快適でランニングコストを抑えた温熱環境、2.厳しい冬を前向きに暮らす工夫のあるプラン、3.人も家も健康長寿に導く素材と性能。それらをものづくりの基礎に据えながら「自分らしさを足すための余白」を美しく残すことをデザインコンセプトとしている。その思いが静かに伝わる玄関ホール。壁面収納で面積を効率良く使ったアプローチは、窓の配置と奥行きなどを吟味し、奥へと引き込むような設計。室内の各所も同じく、さりげなく、控え目に、線の美しさが意識された空間がひろがる。仕立ての良い白いシャツが、どんな小物とのコーディネートも魅力的に見せるように、良質な素材によるプレーンな空間は、住み手のアレンジで印象を自由に編集でき、そのどれも美しく見せる底力を持つ。シンプルだけどただの箱ではない、プロが考え込んだ暮らしの快適性を、身を置く時間ごとに実感できるはずだ。
省エネルギー基準への適合が義務化され、住宅の性能が注目されている昨今、寒さの厳しい秋田ではなおさらに、室内環境が住む人の暮らし方や健康に与える影響は大きい。寒さ対策で窓の小さい家もあるが、それでは四季の豊かな変化に癒やされることもなく、閉塞感と共に暮らすこととなる。この家はリビングの大きな窓をはじめ、家を包む面の熱損失を極力抑えた構造となっており、その外皮はこの地域の省エネルギー基準の2.4倍に相当する。寒い冬にウインドブレーカー1枚で外に立てば体は立ち所に冷える。従来の断熱をそれとすると、この家は冬山登山に耐えるプロユースの上着。宅内でのヒートショックによる事故が多い状況を見ても、家の断熱は住む人の健康のために欠かせない性能と言える。外の寒さに凍えながら玄関ドアを開けると、体温より少し温かい空気にふんわりと包まれる。一年を通して気持ち良い肌感覚で暮らせることの幸せ。その静かで穏やかな空気感は、夏も冬も過ごしにくいこの地域でこそ、よりその価値を高める。
敷地面積 184.00㎡(55.54坪)
延床面積 115.94㎡(35.00坪)
1階面積 57.97㎡(17.50坪)
2階面積 57.97㎡(17.50坪)